オーバーホール

 このページではオーバーホールについてご説明させていただきます。実際に白羽楽器で 行ったオーバーホールの様子を画像を交えてご紹介いたします。

物件 YAMAHA グランドピアノ
状況 ピアノ転倒による破損修復
施工期間 約2ヶ月間
施工内容 ・全塗装
・鍵盤おさ 亀裂破損修復 ・鍵盤バランスホール修復 ・鍵盤抑え破損により新品取り寄せ ・ハンマーシャンク交換(1Key) ・アクションストッパー破損修復 ・ウイペンフレンジ交換修理 ・大屋根角蝶番新品交換 ・脚×1破損により新品交換 ・その他各部点検等

【1】ピアノ設置ホールよりピアノ搬出

【2】浜松市中区領家 白羽楽器株式会社到着

開梱作業開始

 開梱時にて、外装の傷を確認し、塗装及び今後の修理プランを建てます。
通常、全塗装だけで2ヶ月間必要な所、今回は全行程2ヶ月という事ですので
全塗装終了を待たずに内装修理に入れる場所の点検、及び新品部品の発注を しておきます。
新品部品は納期がかかる場合もありますので早めに発注します。
以下の写真は修理に入る前に点検した際の写真です。主な部分のみになりますが、記載しておきます。

状態チェック

  • 所見

    外装の状態も破損箇所が数多くあり、塗装作業も困難を極める状態にあると推測される。
    角蝶番の変形や、内部鍵盤、アクションの土台となる「おさ」という部分にも亀裂が入っており、ここの場所については演奏にも影響する為、入念な修復が必須である。

新たな破損箇所が発見される

  • 解体時において、大屋根突き上げ棒に亀裂が発見されました。
    以前、ステージ上で点検した際には発見されなかった部分です。
    この部分は、大屋根を開ける際の支えをするパーツで、 大屋根全重量がこの部分に集中するので、補修作業よりも 新品パーツ交換にした方が安全性確保の観点から見ても良好と判断し、急遽パーツを発注する事としました。
    これが破損箇所の写真です。

外装を全塗装する為、ピアノを解体し専門の塗装業者へ搬入

鍵盤おさ亀裂破損修理開始

外装を塗装に出すと同時期より、今回最も深刻なダメージを受けた 鍵盤おさ亀裂破損修理を開始しました。
亀裂が発生した場所が、接着だけでは強度不足により運搬時にまた開いてくる恐れが有る為、亀裂に接着剤を流し込み、その上から合板を一枚張って強度を稼ぐ事にしました。
以下作業写真です。

[1]亀裂が入っている場所を再確認

[2]亀裂に接着剤を流し込み、その上から新たに補強用の板を同じサイズに裁断し圧着する

[3] 完了した状態

アクション解体作業

  • ウイペンフレンジを交換する為、アクションを 解体し、交換作業に入る。
    ※写真の下に写っているのがウイペンと呼ばれるパーツです。

アクションストッパーの修復

  • アクションの位置を規定の所で止める為のストッパーが破損し、規定の位置でアクションが固定出来ない為、このストッパーを修復する為にパーツを取り出す。 このパーツを修復する為には、塗装から帰ってきてからの修復となる。

ハンマー(1Key)シャンク交換

  • 転倒によりダメージを受けた最低音のハンマーシャンクの交換

以上が外装全塗装最中に行った工程の一部です。
これ以降の作業は、外装が仕上がってからと、交換パーツをメーカーに発注した物が到着してからの作業となります。

【4】外装塗装完成 組み付け

塗装の仕上がったピアノを工場内に搬入、パーツを組み付けていきます。

[1]搬入作業

塗装工場より引き取って来た本体及び各パーツの工場内への搬入作業

[2]組み付け作業

塗装した各パーツを組み付け、作業が可能な状態にします。

  • 後ろ脚を取り付ける為のパーツ(半月)やアクションを支える土台、前脚を取り付ける為に重要な棚板を組み付けピアノを起こします。

この状態で、今後の作業中に塗装したばかりの脚を万一傷付けないよう 鉄製の仮脚を付けて、作業を進めます。
脚は一本新品、他の二本は塗装した物を使用します。
以下脚の写真です。

状態チェック

  • 塗装前の脚

    少し分かりづらいですが、傷が目立ち、一本の脚は転倒によるダメージで結合部にがたつきが見られました。

  • 塗装後の脚

    一本は新品が入っております。塗装した物と新品とで、色目などに微妙な差が無いかをチェックして、後日キャスターを取り付けます。

【5】交換パーツ到着

脚以外の新品に交換するパーツが到着しました。
・大屋根角蝶番
・鍵盤抑え等

大屋根角蝶番写真

  • 左側2つが新品です。
    右側2つは転倒により歪んでいるのがわかります。

鍵盤抑え写真

上の写真が、新品の鍵盤抑えです。下が破損した鍵盤抑えです。
その他、大屋根支え棒破損部分は、先に書いた通り台座の真鍮パーツと共に、全て新品に、各部真鍮ネジ等細かいパーツにおいても全て新品に交換しております。

【6】各部パーツ組み付け 完成

アクション、大屋根、前屋根等、各部パーツを取り付けピアノとしての形になります。
真鍮パーツ(ペダル、各部蝶番等)を磨き、防錆び処理をして修理は完了です。
この後、アクション部の調整、内部清掃、不具合等のチェックを経て完成となります。

【7】仕上がりチェック

外装の傷、内装の破損は綺麗に修復してあり、特に問題はありません。
外装については本当に綺麗に修復されており 転倒した形跡は皆無です。
ただし、新品時の塗料はポリエステルをメインに使用している現状ですが、 今回は塗料にウレタン系を使用しております。
品質的には問題はありませんが、傷や破損部分には木もしくはパテによる修正がございますので、今後の湿度温度変化及び経年変化による、塗装面に補修跡が浮き出てくる可能性もございますが、当面問題は無いと思われます。
アクション等内部の機構についても全てチェックをしてありますので 問題はございません。
一つ申し上げるとすれば、修理後による新品パーツ及び修理パーツの各部のなじみ、また運送による気温湿度によるパーツの変化が予想されますので、 調律時においてチェックも致しますが、然るべき後に(パーツ同士が落ち着いた頃、一年程後)調整を入れたほうがよいと思います。

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